
- 肥料の種類が多すぎてよくわからない
- 有機肥料と化学肥料って何が違うの?
こんな疑問を解消します。
有機肥料と化学肥料どちらを使うのが良いのか悩みますよね?どちらを使用するにしてもそれぞれ特徴がありますので、まずはその特徴を理解しましょう。

読み終わる頃には、肥料の種類と特徴を理解してどれを使用するか決めることができますよ。
それでは、初心者の方が野菜作りを始める上で、知っておくべき基礎知識として「どちらを使う?有機肥料と化学肥料の種類と特徴」をご紹介します。
目次
肥料について

肥料とは
植物に栄養を供給するために土または植物に施される栄養物質です。植物が育つためには、酸素、水素、炭素、窒素、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、硫黄の9元素のほか、マンガン、亜鉛、鉄などの微量元素が必要とされますが、特に窒素やリン酸、カリウムなどの無機養分が必要であり、植物は土の中に張り巡らした根を通じて、これらの養分を吸収しています。しかし、土の中に含まれる養分には限りがあるため、放っておくとそのうち養分が足りなくなって、植物の生育が悪くなってしまいます。そこで、肥料を使って人為的に土の養分を補う必要があるのです。
肥料の種類と特徴

肥料はその素材により、「有機肥料」と「化学肥料」の2種類に大きく分けられます。このうち有機肥料とは、油粕や魚粉、鶏糞など、植物性または動物性の有機物を原料にした肥料のこと。化学肥料とは、鉱物などの無機物を原料とした肥料のことをいいます。基本的には、有機肥料は即効性が低いが持続性が高く、化学肥料が主体となる化成肥料は即効性が高いが持続性が低いのが特徴です。
まずは、有機肥料、化学肥料それぞれの種類や特徴をご紹介します。
有機肥料
有機肥料は、油粕や米ぬかなど植物性の有機物、鶏糞や魚粉、カキ殻など動物性の有機物を原料にした肥料です。有機物を土壌の微生物がゆっくりと分解し、無機物になってようやく作物に吸収されるため、肥料としての効果が出るのに時間がかかります。
油粕
油粕は、ナタネやダイズから油を搾り取った残渣です。原料によって三要素の含有量は若干変わりますが、リン酸とカリの含有量はわずかで窒素の含有量が多く、有機を代表する窒素肥料です。土の中の微生物により分解され、ゆっくりと効果が現れるので、元肥に利用します。また、土壌微生物を増やし、土の団粒化を促す土づくりにも効果があります。
魚粉
魚粉は、魚を煮て圧搾し、水分と脂を抜いて乾燥させたものです。窒素とリン酸を多く含み、少量ながらカリも含んでいます。また、微量要素を多く含むため、果菜類や葉菜類の味をよくするとも言われています。有機質肥料の中では速効性があり、元肥のほか、栽培期間の長い野菜には、追肥としても利用することができます。
骨粉
骨粉は、ブタやニワトリなどの骨を高温の蒸気圧で処理し、乾燥・粉砕したものです。原料や製造方法によって含有量に違いはありますが、基本的にリン酸を多く含む、有機質のリン酸肥料です。骨粉に含まれるリン酸は、根や微生物が分泌する有機酸に少しずつ溶けて根から吸収されます。そのため、非常にゆっくりと効果が現れ、長続きするのが特徴です。
発酵鶏糞
ニワトリの糞を発酵させたものです。三要素を含み、特にリン酸が豊富なので、果菜類に利用すると実のつきがよくなります。元肥に向いていますが、十分に発酵しているなら追肥にも使えます。発酵が不十分なものはアンモニア臭がするので、利用の際には注意が必要です。
草木灰
草木灰は、草や木を燃やしてできた灰です。燃やしたものによって成分量に違いはありますが、主体はカリで、他にリン酸と石灰を含みます。主に元肥に用いられますが、速効性なので追肥にも利用可能です。また、原料の植物に由来する微量要素を含んでいるため、果菜類の味を良くするとも言われています。
ボカシ肥
ボカシ肥は、米ぬか、油粕、魚粉など、数種類の有機物をブレンドし発酵させた肥料です。三要素のバランスがよく、あらゆる野菜に利用することができる万能有機質肥料です。また、ミネラルたっぷりで微量要素も豊富に含むため、畑の土が豊かになります。効きだしが早いので追肥に向き、また、肥効がじわじわ長続きするので元肥にも利用できます。
米ぬか
米ぬかは、玄米を精米するときに出る粉です。米屋さんや無人精米所などで入手できる「生の米ぬか」と、肥料として販売されている油を搾った「脱脂米ぬか」があります。米ぬかは、リン酸の含有量が多く、窒素とカリも含んでいます。また、糖分やタンパク質も多く含むため、これが餌となって、土壌微生物の活動を活発化させる効果もあります。尚、米ぬかは微生物だけでなく虫の大好物でもあるため、保存中に虫が湧いてくることがありますが、効果に変わりはありません。
油粕 | 窒素 | 緩効性肥料 |
魚紛 | 窒素、リン酸 | 速効性肥料 |
骨粉 | リン酸 | 緩効性肥料 |
発酵鶏糞 | 3要素 | 速効性肥料 |
草木灰 | カリウム | 速効性肥料 |
ボカシ肥(ブレンド) | 3要素 | 速効性肥料 |
米ぬか | リン酸 | 緩効性肥料 |
化学肥料
化学肥料は、鉱石や空気中の窒素ガスなど、自然界に存在する無機物を原料に化学合成した肥料です。無機養分一つのみを保証する肥料を「単肥(たんぴ)」、窒素、リン酸、カリウムのうち二つ以上の成分を保証する肥料を「複合肥料」と呼びます。
硫安
硫安は、水に溶けやすく、すぐに効果が現れる速効性の窒素肥料です。尿素より窒素含有量は少なく、価格も比較的安価なので、扱いやすい肥料です。効果の持続期間は1ヶ月ほどですが、高温で雨が多い時期にはさらに短くなります。速効性なので追肥に向いていますが、元肥にも利用可能です。
尿素
尿素は、水に溶けやすく、すぐに効果が現れる速効性の窒素肥料です。水に溶けやすいため液体肥料として使うこともできます。速効性なので追肥に向いていますが、元肥にも利用可能です。
過リン酸石灰
過リン酸石灰は、速効性のリン酸肥料です。すぐに水に溶けて根が吸収できる形になりますが、追肥で施してもリン酸は土の中を移動しにくく、すぐに根まで届かないため元肥で施します。石灰分も含まれていますが、ほぼ中性なので土壌のpHを調整する働きはほとんどありません。
硫酸カリウム
硫酸カリは、水に溶けやすく、すぐに効果が現れる速効性のカリ肥料です。土壌にも多少保持されるので、追肥だけでなく元肥にも利用可能です。尚、作物が肥料分を吸収した後、副成分の硫酸が残って土壌を酸性にする性質があるため、土壌のpHには注意が必要です。また、カリ肥料には、他に「塩化カリ」もありますが、イモ類に使うと繊維質が多くなります。硫酸カリならその心配がありません。
熔成リン肥(ようりん)
熔成リン肥は、水に溶けにくく、植物の根や土壌微生物が出す有機酸によってゆっくりと溶け出す緩行性のリン酸肥料です。リン酸の他にも植物へのリン酸の吸収をよくするマグネシウム(苦土)を含みます。さらにアルカリ分が含まれているので、土壌のpH調整にも役立ちます。リン酸を吸着してしまうアルミナは酸性土壌で活発になるため、その面からも効果的です。
硫安・尿素 | 窒素 | 速効性肥料 |
過リン酸石灰 | リン酸 | 速効性肥料 |
硫酸カリウム | カリウム | 速効性肥料 |
熔成リン肥 | リン酸 | 緩効性肥料 |
化成肥料(ブレンド) | 要素 | 速効性肥料 |
化成肥料
化成肥料とは、複合肥料の中でも、単肥や複合肥料を配合して造粒または成形したもの、あるいは、肥料または肥料原料に化学的処理を加えて製造された複合肥料のことを呼びます。単肥を配合しただけの複合肥料の場合、その一粒には単一の肥料成分しか含まれませんが、化成肥料の一粒には、その肥料が保証する肥料成分のすべてが含まれています。化成肥料の原料としていくつかの種類の有機肥料を使うことができるので、有機態の肥料成分を含む化成肥料もあります。 最初から作物に必要な無機物の状態になっているので、撒けばすぐに作物に吸収されて効果が出ます。肥料としては、効率が良く安価です。
有機肥料と化成肥料の特徴
有機質肥料 | 化成肥料 | |
効果の現れ方 | 緩効性 | 速効性 |
適した使い方 | 元肥 | 元肥・追肥 |
土壌改良効果 | あり | なし |
効果の持続性 | 長い | 短い |
効果の安定性 | 土壌の状態に左右されやすい | 状態に左右されない |
施肥量の配分 | 難しい | 簡単 |
土壌の緩衝性 | ふかふかになる | 硬くなりやすい |
成分量あたりの価格 | 高い | 安い |
デメリット | 窒素飢餓、ガス障害、虫が湧きやすい 作付けまでに時間が必要 | 根が肥焼けを起こしやすい 土壌の有機物が減少する |
肥料の配合について

植物が生長する上で、特に必要となる三要素が、チッ素、リン酸、カリです。これらは野菜の生育には欠かせない成分です。他にも必要な成分はもちろんたくさんありますが、これら三要素は、野菜を育てると土からなくなってしまうため、肥料として土に与える必要があります。
- チッ素(N)は、「葉肥」とも言われ、主に茎や葉の生育に関わります。
- リン酸(P)は、「実肥」とも呼ばれ、主に花や実付きを良くする働きがあります。
- カリ(K) は、「根肥」と言われ、主に根の生育に関わります。
このように肥料には、上記の三要素が必ず入っています。最近では、育てる野菜の種類に合わせて配合された専用肥料なども販売されていますが、三要素がバランス良く配合された8-8-8などは、専用肥料と違い、どのような場面でもオールマイティーに使用できますので手軽に使いやすい配合と言えます。
まとめ

今回は、 初心者の方が野菜作りを始める上で、知っておくべき基礎知識として「どちらを使う?有機肥料と化学肥料の種類と特徴」をご紹介しました。
野菜作りにおいて、どの肥料を用いて栽培するのがいいのか、それは正解がありません。化成肥料一本で栽培されている方もいれば、様々な有機肥料を駆使して栽培されている方もいます。何を使うかそれは自由です。
使った肥料に対しての効果は、野菜が示してくれますので、肥料の特徴、メリット・デメリットを考えて使い分けていきましょう!